2012年01月30日

不揃いな人民日報と外交部

 さる1月16日、藤村官房長官から、排他的経済水域(EEZ)の管理を強化するために39の無人島の名称を確定させる発表がありました。

 これの39島は日本列島全域に散らばっていますが、その内4島が尖閣諸島とあって、某マスコミぽく書くと「中国の反発は必至だ」でありました。

 16日当日の外交部記者会見を担当した報道官からは「魚釣島とその周辺は古来からの中国領で、争う余地なし」と、従来の主張を繰り返すに留まったので、旧正月後に面倒をそのままにしたくなかったかと思われたのですが、翌日には一転して人民日報から日本政府を型通りでない強い非難が飛び出しています。

中国領土主権維持の意志を試すこと許さない(人民日報 2012/1/17)

 魚釣島とそれに属する島嶼は、古来より中国固有の領土であり、中国はこれに対し争う事の無い主権を擁している。中国が魚釣島を守る領土主権の決心は断固動かない。

 2010年9月、日本巡視船が中国漁船と衝突した。中国側は厳正に抗議し、日本巡視船は魚釣島近海での「法執行」が出来なくなり、中国漁船と船員の安全に危害を及ぼす行為を取れなくなった。魚釣島と付属の島嶼へ命名しようとする企みは、公然と中国の核心的利益を損なう挙動だ。

 中国は一貫して問題の激化を避け、魚釣島問題で駐日両国全体の関係を傷つけないよう大局に着目してきた。日本は中日戦略互恵関係を重視し、東アジアの平和を重視し、独断専行することなく、中国の主権維持の医師と決心を試してはならない。
 核心的利益キターであります。

 核心的利益は台湾、チベット自治区、新疆ウイグル自治区と、安全保障上譲れない領土に対して使われており、東南アジア諸国との領有権争いが激化する南沙諸島もこの列に加わりました。

 裏を返せば、核心的利益の地域は、紛争や領土問題のある地域という事ですから、尖閣諸島も紛争地域と認めたことになりますw

 ・・・などという言葉遊びは止めておきましょう。尖閣諸島以外の外交部は現時点で核心的利益という表現を使っていませんので、人民日報の独走となります。外交部からは棚上げ論(羅輝輝・外交部アジア局長)も出ており、それだけに人民日報と外交部の足並み不ぞろいが目立ちます。

 社説を書く「鐘声」という筆名はここ数年目にするようになったのですが、国際問題についての中国の立場を主張する際に使われており、何重もの手が入っていると言われています。当然宣伝部の手も入っているのでしょう。

 旧正月はもう明けたのですが、この人民日報の強硬姿勢が一発芸となるのか、中国政府の定見となるのかは、もうしばらく様子を見なければなりません。まずは、外交部が大使を呼び出すとか、四つの政治的文書がうんたらかんたらとか言い出すかどうかで、中国の本気度を図って見たいと思います。

ニックネーム aquarelliste at 22:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月22日

裸官を取り締まる気なし

 蓄財したカネと家族もろとも海外に逃亡する汚職官僚が後を絶たない中、かねてから問題視されつつも有効な手立てを打ってこなかった中国政府ですが、広東省がある規定を打ち出しました。

広東省 海外居住の家族持ちは原則上党政正職就かせない(新華社 2012/1/21)

 19日に広東省が発表した「中共広東省委、市県指導者建設の若干の問題に関する既定」(以下、「決定」)によると、配偶者や子女を海外に移住させている、いわゆる「裸官」と呼ばれる職員は、原則上党と政府の正職と敏感な指導的職務に就けないというものです。

 裸官は深セン市が広東省に先駆けて2009年に同じような規定を出した際に、市紀委書記が「裸体官員」と表現したのが始まりのようです。彼らは職権を乱用して集めたカネと妻子を安全な海外に送り込み、発覚しそうになる前にキリのいいところで自身も逃亡するというものです。

 1995年から2005年の10年間で、118万名あまりの裸官が逃亡したとのデータがありますが(林普E中央党校教授)、真面目に働いていれば妻子を海外に送り込めるようなカネはひねり出そうとしても出てくるものではありませんので、妻子が海外にいるというのはそれだけで汚職しているようなものなのです。

 薄熙来(重慶市委書記)は息子の薄瓜瓜を、イギリスのオックスフォード大に留学させているのですが、ウォールストリートジャーナルによると、これまでに60万ドルほどつぎ込まれている模様。

 政治局委員の収入だけで4年も海外に送り込むのは大変でしょうから、誰も言い出しませんがそういうことなのですす。彼より格下で収入も少ないはずの裸官が妻子もろとも移民させているのです。そういうことなのです。

 許国俊(元中国銀行広東省開平支店長)を例に取ると、他2人と共謀し、3人の妻子を米国に帰化させ、自身は偽造した身分証:で香港入りし、偽造した香港籍のパスポートで米国ビザを申請し、米国で偽装結婚。

 3人が逃亡した後の開平支店の口座からは、5億ドル近い損金があったそうです。彼らは逮捕され、中国に送還されていますが、そのまま逃げ切った裸官もたくさんいるのです。

 ただ、上述した深セン市の規定も効果が無かったので、広東省の決定がどこまで本気で適用されるのかという疑念は残ります。

 そもそも職責に見合わないほど蓄財出来てしまう現状にメスをいれないのですから、本末転倒と言わざるを得ません。何人か見せしめで名前を挙げられた後は、過去に出された類似の規定と同様になあなあにされるのが目にいえています。

 自称厳しい制度でありますが、妻子が海外にいる時点で一発アウトにはならないですし、正職とは局長級のことでしょうか。それより下の職務には就けるわけです。

 また、「原則上」は問答無用の一発死ではない(張輝・広東省組織部副部長)とも明言しており、文字通り緩々のザル制度となっています。発覚と同時に最低でも紀律検査委員会の審査と、全職務解任、党籍剥奪のフルコースをお見舞いしなければ汚職は減らないでしょう。
ニックネーム aquarelliste at 08:47| Comment(1) | TrackBack(0) | 消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月20日

人民日報と新華社がケンカ

 みんな大好き仲間割れの時間ですよ。

五常大米はどれほど高いのか(人民日報 2012/1/18)

 「米の市場価格が(1斤=500g)40〜50元であるのに対し、農家は2元も手に出来ない」。最近、一部メディアが高価な五常大米の利益はどこに行っているのか、と疑問を投げかけている。五常大米は実際どれほど高価なのか。

 農民の育てた優秀な稲はカネを稼げるのか。どのような問題があるのか、記者は黒龍江省五常市や、ハルピン市などの大型スーパーや生産企業を取材した。
 中国のメディアが一部メディア(原文は「一些媒体」)という表現を使う場合は、その一部メディアを別のメディアが批判する時です。

今回は、1月3日に「米の市場価格が40〜50元であるのに対し、農家は2元も手に出来ない」と報じた新華社をターゲットに、人民日報が批判するという仲間割れの様相を呈しています。

高級米の利益は誰が持ち去ったのか(新華社 2012/1/2)

 黒龍江省のブランド米・五常大米は1斤(=500g)40〜50元。「特供禮品米」と呼ばれる贈答用になると199元もするのですが、心血を注いで稲を育てた農家は、生産基地にたったの1.9元で売りに出しているといいます。

 五常米農家の張宏雷さんを例に取ると、20ムー(1ムーは約6.67アール)の農地に費やすコストは2.2万元。生産量は2.5万元なので、1斤2元計算で5万元ですから、一家総出でやっても稼ぎは3万元にしかなりません。

 稲作農家は、買い取る企業だと口を揃えて言います。2元で仕入れた稲を50元で市場に下ろしているのですから、そりゃぼろ儲けです。

 どうやら企業が農家と結んでいる契約で既定された金額で買い取らないばかりか、一部の契約では覇王契約と呼ばれるメーカー側に非常に有利な内容になっており、1斤1.8元で買い取る事、農家がなぜかメーカー側に保証金を支払う事などが盛り込まれています。

 これに対し人民日報は丁寧に取材し、スーパーでは1斤8元程度で売られているし、199元のはメーカーの話題づくりの贈答用である。また、1.8元/1斤というのは最低価格であり、そこから品質によって0.5元から1.5元のプラスがあるのだ、などと異論を唱えています。

 どちらが正しいのかはあまり興味が無いのですが、共産党機関紙である人民日報と、中国政府の一機関である新華社が、1つの問題に対して異なる見解を出すのは珍しく、しかも後追いの人民日報が新華社の報道を否定する展開となっています。

 人民日報と新華社の違いについては大した認識はなかったのですが、こういうのが続くようなら背景を考えなくてはなりません。なかなか興味深い事例となりました。
ニックネーム aquarelliste at 23:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 消息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする